約半年ぶりの一人旅。しかし今回は日にちがあまりとれなかった。何処へ行こうかと悩んだ末、今回は東京へ行って中心地を歩いてみようと思った。以前、関東へ行くときはいつも夜に走ったんだけど、今回は昼間走ることにした。道もいつもとは変えて、京都府宇治市の自宅から24号線を奈良の方へ南下し、163号線を東へ、上野市から名阪国道を走り、亀山で1号線に合流した。ここからは何度も走ってる道だけど、夜と昼では印象が違って周りの景色が美しく見える。ただ、名古屋あたりから猛烈な渋滞が待っていた。しかし、昼間の幹線道路、それは仕方のないことだ。

 

 浜名湖を越えて1号線から150号線に折れる。海岸沿いの気持ちのいい道だ。焼津を越えて道は日本平の辺りを走る。ここは以前にも団体旅行で来たことのある場所だ。そのときもう一度この道を走りたいと思っていた。左手に久能山が見える。なおも進む。辺りが暗くなってくる。1号線はいきなり右へ左へとカーブする急な坂道となる。そう箱根峠。昔から箱根八里といわれるようにここは東西幹線の難所だったのだ。その峠を越えて小田原を越え横浜へ。ここでスーパー銭湯の看板を見つけたので入って汗を流した。そこから立川市の方へ北上し、以前泊まったことのある立川市民球場の駐車場に車を止めて寝ることにした。

 

二日目、少しのんびりとしたあと、車を置いて歩いて立川駅のほうへ向かった。JRに乗り、新宿駅で降りる。新宿アルタ前。「笑っていいとも」でいつも映っている場所だ。ビデオカメラを持って完全に「おのぼりさん」と化している自分。でもいいのだ。田舎もんで結構。いつもテレビで見ている場所が目の前にあると、やっぱり嬉しいのだ。いつも思うのだが、想像している場所と実際はかなり違う。そのギャップを楽しむのも面白い。地下鉄に乗って東京駅に向かう。いよいよ皇居周辺を巡ろうというのだ。

 

 

 東京駅を降りる。赤煉瓦造りのあの見慣れた駅舎。そこから太い道が皇居の方へと続いている。その道を歩く。思いの外皇居と東京駅は近い場所にある。以前来たときは車で周りを廻っただけなので中は知らない。その入り口に立ってその広大さに驚いた。京都にも御所があるが、その広さは比較にならないように思う。しばらく歩くと見慣れた風景。二重橋である。本当に美しい橋だ。そこから見る東京の風景は面白い。林立する丸の内ビル群がそびえているのに、こちらは何もない広場である。その密と漠のコントラストがこの地が特別な場所であることを物語る。

 

                                                       ここで少し不思議に思うことがあった。警官の警備が厳重なのもそうだが、背広姿の男性が何十人と立ってうろうろしているのだ。自分はどこかの会社の社員旅行だと思っていた。でも一向に移動する気配もなくそこに居続ける。少し疲れたので芝生に腰掛けて休憩していると、その中の一人が話しかけてくるではないか。「ご旅行ですか?」「お一人ですか?」疑問に思いながら答えていると、その中年男性は私服警察官で、ここにいるものは全てそうだ、という。そこで「もうすぐ天皇陛下がお帰りになります」とのこと。そういえば2.3日前、天皇陛下が欧州の方へ行ってられるとテレビで言っていたことを思い出した。ビデオカメラを持っている自分にその人は「撮っていただくのは結構ですが、車の方へあまり寄っていかないようにお願いします」とにこやかに話して離れていった。

天皇陛下に間近にお会いできる。と思うと、少しミーハーな感情が湧いてきて、帰られるまでそこで待つことにした。すぐに帰られるような周りの様子だったがなかなか車はあらわれなかった。それから30分以上が過ぎたとき、ふと周りを見ると、人数が多くなっている。観光客の外国人。さんぽ途中で立ち寄った人たち。天皇陛下を崇敬する団体だろうか、日ノ丸を持って整列している人たちがいる。その中の2.3人が日ノ丸の小さな旗を辺りの人たちに手渡している。すると急に慌ただしくなってきた。みると黒塗りの車が走り去り、その後方に、白バイと黒塗りの車が延々とつづいている。それらの車列は本当にゆっくりと、人がジョギングするほどの速度でゆっくりこちらに向かって近づいてきた。

すると先ほどの団体のリーダーが「天皇陛下バンザイ」と叫ぶ。周りの者がそれに合わせてその言葉を連呼する。車列の2台目。ひときわ大きな車に天皇皇后両陛下のお姿をみることができた。お二人は窓を開け、こちらに向かってにこやかに手を降っておられた。車列なおもゆっくりと二重橋を渡って皇居の中へと入っていった。さきほどの団体が今度は「君が代」を大声で歌い始めた。外国人観光客が少し不思議な目をして眺めている。私服警官たちは三々五々帰っていく。僕も次の場所へ向かうことにした。

 

 

皇居の外周道路を少し歩くとある門が見えてきた。「桜田門」歴史で習った覚えのある門。その近くには警視庁がある。官庁街を歩いて、国会議事堂前についた。いわずとしれた日本国の最高議決機関だ。警備の警官を横目に門の前からしばらく眺めていた。そして国会の塀にそってぐるりと歩きちょうど裏側についた。職員や秘書のような人たちが忙しそうに歩いている。ビデオカメラ片手に普段着でぶらぶらしている自分は彼らからどのように映るのだろうか。でもそんなことはどうでもいい。すると国会の裏に首相官邸が見えた。

 

 

官邸前の通りはバリケードがされ通行止めになっている。構わずに入り、通りの向かいからビデオで官邸を撮していた。すると警備の若い警官がやってきて「撮影をやめてください」という。観光客が政府の建造物を撮影するのは禁止されることなのか、と思い、何故か聞いてみた。すると年輩の警官が後ろから来て、「いいんだ」と若い警官を静止した。なぜかピリピリした雰囲気。さすが政治が生きている場所だな、と思った。それからその前を通って坂を下る。また細い道を歩いていくといたるところにバリケードがもうけてあった。

 

 

狭い入り組んだ道に右翼の街宣車が止めてあり大音響で音楽を流している。ここを通らせろと警官と口論をしている。そうすると違う場所からも街宣車の音が聞こえてきた。そうか、これがあるので警備が厳しいのか、と思った。しばらく歩くと、自民党の本部が見えた。万年与党の大政党だけあって国会に近い場所に大きな建物が建っている。それから赤坂見附の交差点を青山の方へ歩く。すると左手に見覚えのある建物。TBSの社屋だ。右手には広大な緑地が広がる。ここは赤坂御用地。迎賓館のある場所だ。相当歩いたので足が痛くなってきた。右手に折れて歩いていく。外苑東通り。するとその先にJRの駅があった。信濃町駅。そこから一段下になっている谷間に密集してアノ創価学会の施設が建っている。公明党の本部も見える。新宿から中央本線に乗り換えて立川方面へ。しかし座席に座ったとたん睡魔に襲われて、眠ってしまい、立川駅を乗り過ごしてしまった。あわてて乗り換えて戻ってきた。駅前でラーメンを食べて歩いて車へともどった。

本当に今日は疲れた。座席をリクライニングしてそれからぐっすりと寝てしまった。目が覚めたとき空はもう暗くなっていた。さて、帰るとするか、ということで八王子方面に向かう。途中、以前にも行ったことのある銭湯に入った。「玉ノ湯」というどこにでもある名前だが、ここはレトロ感覚あふれる銭湯なのだ。外見も内装も戦前に建てられたような造り。浴槽に張られているタイルも年期が入っている。もちろんサウナなどはない。でもこの雰囲気がとても気に入った。八王子市から国道20号線を甲府方面へ向かう。この道は甲州街道と呼ばれる道だ。

 

 

夜なので、車の台数も少ない。多くカーブと峠道を越えて走る。甲府の手前、大和村あたりの道の駅で車を止めて寝ることにした。朝、目を覚まし走る。甲府の町を抜けて国道20号線を諏訪方面へ。諏訪湖の手前頃から急におなかが差し込んできた。少し冷えたらしい。車で寝るときは寝冷えに気をつけなければならない。諏訪湖岸の公園のトイレに飛び込んで用を足した。ここからの道はもう、いつもの道といっていい。塩尻から19号線を岐阜方面へ、そこから大垣、関ヶ原、滋賀を抜けて宇治の自宅へとゆっくりと走り、無事戻ることができた。

2泊3日の小旅行だったが、日本の中心地を肌で味わうことができた。

 


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